第30章 魔女の薬(兼続さんルート)(R-18)
商人「おや?舞様は信じない質ですかい?
惚れ薬で恋仲に発展した男女は多いそうですよ」
「いえ、私達には必要ないかと…」
言いよどむ舞の肩に、兼続の手が回された。
兼続「俺達はすでに恋に落ちているからその薬は必要ない。
俺は婚姻の約束をとりつけたくて口説いているんだ。
一度申し込んで断られたからな」
『絶賛求婚中だ』と堂々と宣言され、舞は身の置き所がなくなって小さい身体をさらに小さく丸めた。
「え……ぁ……ぅ………」
言葉に詰まって真っ赤になり、顔色ひとつ変えない兼続とは対照的な反応だ。
2人の様子を交互に見比べて、呉服屋の主人はいらぬことを言ったと苦笑した。
商人「これは野暮なものをオススメしてしまいましたね。
でしたら今日お買い上げになった反物で小袖を縫われるのでしょうから、似合う帯を贈られてはいかがですか?
兼続さまが舞様を想って選ばれた帯なら、お喜びになると思いますが…」
兼続は握っていた舞の手に力をこめて向き直った。
兼続「物で釣ろうとしているわけじゃないが、俺が帯を贈ったら喜んでくれるか?」
「う……それは嬉しいです…」
舞は手繋ぎデートをしているだけで幸せだったのに、プレゼントしたいと言われて嬉しくないわけがない。
甘酸っぱい雰囲気を漂わせていることに気づきもせず、二人は初々しく笑みをかわしている。
呉服屋「おやまあまあ、仲がよろしいことで……では帯をお持ちします」
兼続が色よい返事をもらえるのは遠くなさそうだと、呉服屋の主人は商品棚に手を伸ばした。