第30章 魔女の薬(兼続さんルート)(R-18)
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それからというもの…
有言実行の兼続は、舞の体の痛みが取れるまではどこへ行くにも抱きあげて歩き、本来女中の仕事である着替えの手伝いや髪結いまで甲斐甲斐しく世話をした。
そして兼続同様、針子の仕事をしばらく休むことになった恋仲のために、城から連れ出してもくれたのだが…
呉服屋「おや兼続様が舞様とご一緒とは珍しい。
いつも一緒におられる佐助殿の代わりですかい?」
呉服屋の主人は舞が選んだ反物を包みながら話しかけ、兼続は代金を渡しながら大真面目に言い放った。
兼続「いや、逢瀬の最中で口説いているところだ」
「くどっ……!?」
確かに兼続は城を出た時から「今日は一段と可愛い」「いつもと髪型が違う」「傷が癒えて出かけられて嬉しい」とは言っていた。
ただの愛情表現だと受け止めていた舞は『あれは口説いていたの!?』とギョッとしている。
兼続「その顔を見れば、俺の口説き方が足りなかったようだな」
「だって今更口説かなくても私は兼続さんが……」
人前で告白しそうになって舞は慌てて口を噤んだ。
商人「でしたら隣の薬屋に良い品があるそうですよ。
なんでも南蛮渡来の惚れ薬とかで、意中の相手と一緒に飲めばたちまち恋に落ちるとか」
「や、南蛮渡来の薬はちょっと…」
あやしい薬はあの夜の媚薬だけでたくさんだと舞はげんなりと断った。