第30章 魔女の薬(兼続さんルート)(R-18)
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「……ありがとうございます」
意識朦朧だった舞も流石に城内のざわめきで目を覚ました。
通された部屋は主の性格をあらわすように静謐な空気が漂い、整理整頓がすぎて生活感の薄い部屋だった。
しかし初めて訪れたにも関わらず、舞は鼻をスンと鳴らして安堵した表情を見せた。
兼続「舞の部屋は奥に用意するように言っておいた。
急ごしらえの部屋だ。不便があったら何でも言え。
お前の部屋の荷物は女中達がまとめている最中で、そのうち持ってくるだろう」
「なんで兼続さんの部屋に私の荷物を持ってくるんですか?
それより謙信様はご無事でしたか?あれ、大名はどうなったの?そういえばいつ、どうやって駕籠に乗ったの?」
連発する疑問に兼続は順を追って説明したが舞は突然のことに戸惑い、顔を曇らせた。
大名の処分はともかく昨夜のことが謙信に知られてしまい、こうして部屋の大移動ともなると、そのうち周囲も事情を知ることになる。それを懸念してのことだ。
兼続「今まで通り暮らせるように手を打つから安心しろ」
「休む前に謙信様に会わないと、お怒りだったでしょう?」
兼続「謙信様は舞に対して怒っていらっしゃらない。
早く休んで健やかな顔を見せろとのことだ」
「私に対してって、じゃあ兼続さんに対しては怒っていたんじゃないですか?」
兼続「…とにかく満身創痍の身体で駕籠に乗せられてきたんだ。身体がガタついているだろうから早く休め」
半ば無理やり布団に寝かせられ、舞はその時になって体が清められ、清潔なものを身に着けていることに気づいた。
この男は舞が寝ている間に謙信の怒りを一身に買ってくれたばかりか、体を清めた上で駕籠に乗せ、こうして身の上まで案じてくれる。
何から何まで完璧にこなす男に舞は兼続が無理しているのではないかと心配になった。
だがその心配をよそに、兼続は今後のことを話してもいいかと瞳を熱くして迫ってきた。
兼続「俺達は恋仲になったばかりだが、すぐにでも許嫁になってくれないか。
そしてなるべく早く夫婦になりたい」
「いいなずけ………?」
頭にクエスチョンを浮かべた舞に、兼続は丁寧に説明した。