第30章 魔女の薬(兼続さんルート)(R-18)
―――そうして東の空が淡く白みはじめた頃…
半ば意識を失っている私を抱え、兼続さんが押し入れの外に出た。
そっと仰向けに寝かされ、薄い掛け布団が掛けられると私の身体は休息を欲してダラリと弛緩した。
兼続「舞、もうすぐ夜が明けるぞ」
「ん…………」
新鮮な空気が肺に流れ込み、遠のいていた意識が戻るにつれて身体の痛みに襲われた。
何故痛いのか一瞬考え、少しして『一晩中抱かれたんだった』と息を吐いた。
(もう…薬の効き目はなくなったのかな)
押し入れから出してもらえたから症状としては落ち着いたのだろう。
ホッとした気分で息を吐き、今度は自分の身体に意識を向けた。
反らしていた首や背中の筋が痛い。体重がかかっていた膝や肘は痛覚が麻痺して何も感じないし、太ももも腰もガタガタだった。
押し入れの壁で擦ったのか肩や二の腕付近もヒリヒリする。もちろん兼続さんを受け入れていた場所も。
満身創痍とは今の状態のことだろう。
しかし熱と湿気がこもった押し入れから解放されて、普通に息ができるだけで生き返るようだった。
兼続「夜が明けたらすぐ手当するからな。
もう少し辛抱できるか」
声を出すのが億劫でコクっと頷いた。
静かな部屋の外からスズメの声がしていて、一番鶏はもう啼いた頃かと瞼をもち上げた。
(あ………兼続さん…)
てっきり兼続さんも横になって休んでいるのかと思えば、すぐ横に座ってこちらを見ていた。
(顔を見るのは凄く久しぶりな気がする…)
知性溢れる美しい人に、改めて見惚れてしまった。
昨夜はあんなに野性的に変貌していたのに、嘘みたいにいつも通り。
湖面のような静かさをたたえている。
鍛え抜かれた肉体が仄明るい部屋の中で無防備に晒されていて、この人に抱かれたのかと静かな興奮に襲われた。
じっと見ていると兼続さんが怪訝そうに眉を寄せた。
(いくら綺麗だからって見過ぎちゃったな)