第1章 日ノ本一の…(上杉謙信)(R-18)
謙信「ふん、まぁ、良いだろう。兼続、この者はお前の下につけろ」
「え」
思わず声を漏らしてしまった私に、視線が集中した。
(展開についていけないっ。なんで兼続様の下に?)
戸惑いの『え』だったのに、謙信様はそう捉えなかったらしい。
謙信「ほう…、兼続の下は嫌か。ならば、明日から俺につくと良い。
お前の兄がどれほどのものか、お前が証明してみせるのだろう?」
(ムリムリ!謙信様の下で働いたら女だってバレちゃうかもしれないしっ)
尚文ではなくて妹だとバレたら……うちはもう父上の代で終わりだ。
「っいえ、驚いただけで、兼続様の元で働くことに異存はありません」
兼続「来たばかりの者を謙信様につけるわけにはいきません」
兼続様の声に大きく頷く。
(そうよ、兼続様!もっと言って!!)
謙信「もう決めた。間諜だとしてもこいつは俺よりも弱い。仕掛けてきたとしてもなんということはない。尚文、お前は明日から俺の小姓だ」
『俺より弱い』という言葉に微妙に傷ついたけど、今は謙信様の下で働くことになった衝撃の方が強い。
(つ、鶴の一声ってやつだ…………)
兼続様や家臣達が了承の返事をするのを聞きながら、私は茫然として返事をするのが精いっぱいだった。