第30章 魔女の薬(兼続さんルート)(R-18)
兼続「後ろを向くなっ、走れ!」
「はい……っ!」
多数の男が血眼で追いかけてくる。1人倒しても騒ぎを聞きつけて新たに2人、3人と加わる。
男1「逃すな!」
男2「待て!待ってくれっ!」
身元が割れて元の部屋には戻れなくなり、安全な場所を探して走り回った。
屋敷の造りはどこも同じようなものだと、客室が多く設けられている区域を目指した。
「はぁっ、はあっ……!!」
(舞の息があがってるな…)
抱えて走ろうかという頃に、やっと客間が並んでいる場所に到着した。
兼続「もうすぐだ。奥へ向かうぞ」
「はぁっ、は、い……!」
手前にずらりと並んでいるのは一般客用の客間、その奥に進めば付き人や女中にあてがわれる質素な部屋があるはずだ。
身分のある女が逃げ込みそうにない場所で、さらに周りに部屋がたくさんあるとなれば見つけられるまでの時間も稼げるだろう。
兼続「ここだ、早く入れっ」
男達を振り切ったところで部屋になだれこんだ。
なるべく音をたてないように押し入れを開けると、察した舞が中に飛び込み、後から続くだろう俺を振り返った。
兼続「そこに隠れていろ」
「兼続さんは!?」
兼続「男達を陽動してくる」
「っ、………!わかりました」
不安でいっぱいといった顔だが、聞き分けの良い返事をした。
襦袢1枚で隠れているところを見つかったらひとたまりもないが、何もせず二人で隠れたら包囲される可能性があった。
兼続「なるべく早く戻る」
「はいっ…!待ってます」
ほっそりとした手が布団の隙間を縫って差し出され、俺は無事を祈って強く握り返した。