第30章 魔女の薬(兼続さんルート)(R-18)
「……」
兼続「……」
真っ暗に近い湯殿で見つめ合う。黒目が俺への愛情で溢れていて、言葉以上に好きだと訴えかけてくる。
澄んだ眼差しに反応して胸の内が勝手にあふれ出た。
兼続「愛しいと…思っている。
どんな表情でも、バカげた行動でも、舞がしたことならば可愛いと思える。
この気持ちは憧れではなく恋だ…」
喉元に引っかかっていた言葉をやっと伝えられたが、舞は驚きの表情を浮かべ、そのうち小首を傾げ、最終的には猜疑の目を向けてきた。
「だっていつもため息ばっかりで、面倒くさそうな顔してて…え、本気で言ってますか?」
兼続「天の宝玉は至高のものだ。そういうものは手に入れず、眺めて満足するもの。
手に入れようとしなければ欲望は生まれない……舞が俺の気持ちに気付かなかったのも頷けるだろう?」
舞が『ほんとに?』と呟いて、身体を硬直させた。
可愛い以外に言葉が見当たらず、これで弁舌な人間だと言われているとは笑えてくる。
兼続「信じないのは勝手だが、まさか俺のことを手当たり次第に女を口説く色男だと思っているのか?」
「まさかっ、そんなふうに思ってません!
ただ急に言われても実感がわかない時ってあるじゃないですか…」
兼続「それなら俺も同じだ。
お前が俺を慕っていたとは露とも知らず、信じられないでいる」
舞に向ける視線に熱が帯びる。
顎をすくって上向きにさせると舞は視線を外せずに焦っている。
兼続「なんでそんなに表情がころころ変わるんだろうな?
見ていて飽きない……可愛い」
「え……え……?」
ぶわっと舞の身体が温度を上げた。
口をパクパクさせていて、この口に指でも咥えさせたら面白い反応をしてくれそうだ。
(確実に怒るだろうな)
想像して笑いを噛み殺した。