第30章 魔女の薬(兼続さんルート)(R-18)
兼続「意味がわかって言っているのか?
上書きなどと言っていると止まらなくなるのがわからないのか」
俺の内に縛り付けている淫獣が鎖を引きちぎろうとしている。
(舞に触れていいと?)
(どこまで……最後までという意味か?)
(少しは俺に気があると…思っていいのか?)
そんな思いが取り繕っている皮を破って飛び出してきそうだ。
薬の誘惑に心を預けたら、濡れネズミになっても可愛い舞がどうなるかわからない。
しかし内に溜まる欲望が暴れ回っている。
己の感情だというのに、その暴れっぷりは言うことをきかない。
「もちろん、わかっています」
兼続「いや、わかっていないだろうっ!
今日の今日まで何とも思っていなかった男に何を言ってるんだっ」
「っ!」
舞が俺を好いているかもしれないなどと、ありえないのに。その可能性を否定するために声を荒げた。
今宵は謙信様も居て、謙信様は舞のことを恐らく好いている。家臣としては身を引くべきだ。
慰めてもらうなら謙信様にしろと言いそうになったが、舞の落ち込んだ表情に言葉を飲み込んだ。
「兼続さんは何とも思っていなかったでしょうけど、わ、私は…一目惚れだったんですっ!」
兼続「一目惚れ…?なんの冗談だ」
「なんで冗談にしちゃうんですか。
私が一目ぼれだって言ってるのにっ」
兼続「しかし……」
ごく真剣な表情から嘘は見受けられない。もともと舞はこの手の冗談を言う人間じゃない。
ならば一目ぼれだったという言葉は事実なのだろうが、しかし…だ。
舞と初めて顔を合わせたのは1年前だが、好意の視線を受けた記憶がない。
蛇に遭遇したカエルのごとく、いつも佐助や幸村の後ろに隠れていたから、視線を感じる以前の問題でまともに顔を合わせたこともないのだ。