第30章 魔女の薬(兼続さんルート)(R-18)
――――
厨に到着すると心得たもので、番をしていた下働きの男が井戸に行き、目の前で水差しに水を注いだ。
そうした後に毒見をしてみせる徹底ぶりに、謙信様の報復によほど恐れ入ったのだろうと大名の心の内が知れた。
兼続「お前は薬を盛られていないのか」
下男「はい。本当に恐ろしいことで…」
男は視線を下げている。
(しかし愚かな企てをしたものだ)
あの大名は元々細かいことを気にしない質だったが、まさか宴で無差別に媚薬をふるまうとは呆れたものだ。
兼続「この屋敷にはいかほどの男達がとどまっているかわかるか?」
男「へえ。おおよそ80名程と聞いております」
兼続「そんなに居るのか…」
(砂糖に群がるアリは予想していたよりも多いな)
水がなみなみと入った水差しを抱え、厨を後にした。
視界に部屋の襖を捉え、今回の徹夜はひと苦労しそうだと思った時…不審な物音がした。
兼続「?」
部屋を空けていたのは佐助から教わった時間の単位で言えば10分かそこらだ。
「………!……やあっ………!」
俺の部屋から聞こえたのは、間違いなく舞の声だった。
(しまった!もう居場所をつきとめられたのかっ!?)
兼続「舞っ!」
冷や水をかけられように寒気が走り、部屋に駆けこんだ。
男「な、なんだ!?」
見知らぬ男が狼狽えた声をあげ、畳にはみみずばれの跡を残して衝立が倒れていた。
男数人に囲まれ舞は寝間着を脱がされ、襦袢から肩がむき出しになっていた。
————涙目の舞と目が合った瞬間、頭の中で何かがブツリと切れた。