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☆姫の想い、彼の心☆ <イケメン戦国>

第30章 魔女の薬(兼続さんルート)(R-18)


男「どうか…お許しを…」

謙信「愚かだな。謝るのなら最初からしなければ良い。
 後悔しても最早……遅い」


謙信様は嘲笑い、すぐに冷めた顔に戻った。

手入れの行き届いた銀の刀身が、バイオリンの弓を引くようにスっと引かれた。


男「うっ!」

「け、謙信様っ!?」


男は一声呻き、布団にバタッと倒れて動かなくなった。


(まさか…うそ……殺しちゃったの!?)


男の首が汗じゃないもので濡れている気がして顔を覆うと、塞いだ視界の向こうで謙信様が刀をおさめた。


謙信「殺していないから安心しろ。浅い傷をつけて正気を保たせるつもりだったが失神した。
 俺の恋仲に手を出そうとした割につまらぬ小者だ」


つまらないと言い放った謙信様は、期待して損をしたとでもいうかのように気だるそうにしている。

その態度が『戦がなくてつまらん』と言っている時と同じすぎて、通常通りの人を前に漸(ようや)く平静を取り戻すことができた。


「はぁ……良かったです。殺してしまったのかと思いました」

謙信「舞の前で殺生はしない」


女性につれない人だけれど、こういうところは紳士的だ。

私が安堵していると謙信様は面倒そうに眉をひそめ、男が倒れている布団の端を持ちあげた。
そのまま思いきり引っ張りあげたので男は布団から畳に無様に転がった。


(何をしてるんだろう……)


私が見守る中、謙信様は転がっている男を冷ややかに一瞥した。


謙信「舞の残り香のする布団で寝かせるわけにはいかん。
 畳でも惜しいくらいだ。廊下に掃き出すか」


本当にそのままつまみ出してしまいそうだったので慌てて謙信様を引き留めた。


「そんなことしたら風邪をひいてしまいます!」

謙信「情けは無用だ。危うく襲われるところだったのだからな。
 風邪くらいひかせてやればいい」

「謙信様が懲らしめてくれたのでもう良いです。
 媚薬が切れたらこの人も反省してくれると思いますし」


失神するほどの恐怖を味わったのだから、これ以上追い打ちをかける必要はない。

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