第30章 魔女の薬(兼続さんルート)(R-18)
男「ははっ、いたぶりがいがありそうだ。
なぁに…観念して大人しくしていれば気持ち良くしてやるぜ?」
「っ~~~~~~!」
謙信「舞!」
もう駄目だと観念した時、勢いよく襖がひらき、黒い影がしなやかに入りこんできた。
暗がりにもわかる危険な色を浮かべた双眸が、私に覆いかぶさっている男を認めて鋭さを増した。
「……ぁ……っ!」
心の中で謙信様の名前を呼んでいるのに声が出ない。
謙信様は大丈夫だと視線を送ってきて、姫鶴をスラリとひき抜いた。
謙信「誰の女に触れているのかわかっているのか?」
問う声はぞっとするほど冷たく、静かなる怒りが伝わってくる。
抜き身の刀が一瞬にして男の鼻先につきつけられ、男はヒッとおかしな叫び声をあげた。
しかし刀に怯えて震えていても、男は私から手を離そうとはしない。
どうにかこの場を逃れて私を抱こうとしている魂胆が丸見えだ。
(この人、謙信様から逃れられると思ってるの?)
謙信様もそう思っているのか、明らかな侮蔑の目を向けている。
謙信「くだらぬ者よ。女を慰み者にしようとする性根、叩き折ってくれよう」
謙信様の目が鋭く光ったかと思うと瞬く間に男の背後に回り込んだ。
夜行性の肉食獣がそうであるように音もなく動き、獲物に近づく足取りだけが速い。
謙信様の腕がさっと動き、男の無防備な背中を刀の側面で平打ちにした。
男「ぐっ…!!」
鈍い音がして男の体が硬直し、その隙をついて私は男の腕から逃れた。
「ぁ………謙信様っ」
謙信「後ろに居ろっ」
(声が…でた……!)
涙目で必死に駆け寄ると、手首を引っぱられて謙信様の背にかばわれた。
謙信様が現れてから1分たらず。
あっさりと救出されてへなへなと座り込んだ。隣の部屋にこんなにも頼もしい人が居たのに、助けを求められなかった自分が情けない。
見ると知らない男が背中を押さえて布団に蹲(うずくま)っている。
謙信様はその男の襟首を引っ張って無理やり起こすと、首筋に愛刀をピタリと当てた。
謙信「俺の女に触れ、泣かせた罪を贖ってもらおうか」
男はここまできて漸く観念した様子で、襟首を絞められている苦しさから脂汗を浮かべていた。