第29章 ぬいと私~愛の告白は大声で~(謙信様:誕生祝SS2024)
謙信「そんなにこの品は喜ばれる代物なのか?
お前がこんなに喜ぶとわかっていれば、あらゆる手を使って取り寄せれば良かったな」
「1個で十分です。
少し過ぎてしまいましたが、この時期に謙信様にチョコレートを貰ったっていうのが嬉しいんです」
何日か飾ってから食べようと貴重なチョコに蓋をした。
すぐに食べて欲しかったのか謙信様が少し残念そうにしている。
謙信「チョコを贈られて何故そんなに喜んでいる?」
「実は現代では2月14日はバレンタインデーと言って、好きな人にチョコを贈る日なんです。
女性から男性にあげることが多いですが、最近は友達や自分、推しにあげる人も居ます。
そして特別な1個は本命チョコと言って、気持ちがこもっているというか…
はぁ、謙信様は知らずに用意してくださったのでしょうが、とっても嬉しいです」
誕生日の宴で、まさか本命チョコをもらうなんて誰が予想できただろう。
抱きついて喜びを表現したいところだけど今は宴の真っ最中。
「謙信様…あとで一緒に食べませんか?
それとお礼もいっぱいしたいです」
もじもじしながら言うと、私の表情から何かを察した謙信様が甘く微笑んだ。
謙信「舞の言う礼がどんなものか気になるな。
今夜は早めに切り上げるとしよう」
「謙信様…」
佐助君の隣で幸村が「空気が甘ったりぃ、どうしてくれるんだ」とお酒をどんどんあおって、佐助君は絶妙のタイミングで空の盃にお酒を注いでいる。
幸村の顔がどんどん赤みを増していき、少し心配だ。
信玄様と義元さんもゆるりとお酒を飲み、時折私と目が合うと、謙信様に気づかれないようにウインクをしてくれた。
大広間は笑いが絶えず、皆が楽しそうにお酒を飲み謙信様の誕生を祝っている。
「皆さん、とても楽しそう…。
謙信様の誕生を祝いたい人達はこの広間の外にも大勢いるはずです。
私がここに来る前から毎年こんな感じだったんでしょう?
幸せ者ですね、謙信様」
謙信様が苦しんだ日々にも、目をむければ小さな幸せがあったはず。
気付かずにいたと思うと少し切ない。