第29章 ぬいと私~愛の告白は大声で~(謙信様:誕生祝SS2024)
「我慢しようとする前に何でも相談してください。
私のために変わってくれようとしてくださるのは嬉しいですが、苦しんでまで変わって欲しいとは思いませんから」
謙信「舞………。ありがとう。
俺は変わらねばならないと思いながら変わりたくない、何故変えなくてはならないのかと考え続け、納得できる答えを出せなかった。
このままで良いと言うなら、そうしたい。今のまま舞を愛したい」
無理にでも変わろうと閉じこもってまで苦しんで、本当に謙信様の愛は深い。
周りを巻き込んでしまうのは少々困った人だと思うけど。
「いつもの謙信様に戻って良かったです。自信持ってくださいね。
私は『え!?』『うそ!?』『わぁ!?』って言いながら、心のどこかで楽しんでいるんです。
好きなように生きてください。置いていかれないよう、私がついていきます」
謙信「それでは舞が大変ではないのか?」
「そうでもないです。先程も言いましたが謙信様と居ると楽しいので。
多分ですけど、ここにいらっしゃる皆さんもそう思っていると思いますよ。
謙信様も佐助君や信玄様達と一緒に居て楽しいと思いませんか?」
言葉を重ねる毎に謙信様は自分を取り戻していく。
謙信「楽しいか……そう言われれば、ここ数日つまらなかったな」
「謙信様、楽しいの反対語はつまらない、ですよ。
皆と会わなかったからつまらなかったのではありませんか?」
謙信「……そう考えると癪だ」
「ふふ、素直になってください」
意地を張る謙信様がおかしくてクスっと笑ってしまった。
この人の手の中にも幸せがある。
きっと私と出会う前の謙信様も、本当は持っていただろうもの。
どんなに探しても見えないもの
意識しないと気づかないもの
何気ない一日が幸せだということも、
いつも居る人がそこに在ることが普通ではなくて、
特別なんだってこと
「これからも皆と一緒に楽しく生きましょうね」
謙信「……今日の舞の笑顔は眩しいな。
良い顔をしている」
私の幸せがうつったように謙信様も微笑んで、柔らかい口づけをくれた。