第33章 歪な愛は回る(謙信様)続編配信記念作品
じっとりとした仄暗い欲望に包まれた夜。それ以降、謙信様はぱったりと悪夢を見なくなった。
謙信様が血相を変えて私を探し回ることもなくなり、平穏はあっけなく戻ってきた。
私は次第に悪夢のことを忘れ、そのせいで大きな間違いを犯した。
運命のあの日。
『戦が終わったが怪我人が多くて帰還できない』という救援要請を耳にして、私は城から出るなと言われていたのに出てしまったのだ。
戦も終わっている。救援部隊に身を置いていればまず危険はない。心配した幸村が一緒についてきてくれたし、万全のはずだった。
現場に到着してみると謙信様に顔を合わせてからと悠長なことを言っていられない状況だったため、すぐに応急処置の仕事に入った。
男「恨みはないが死んでもらうっ」
「きゃっ」
(謙信様を悲しませることはしないって言ったのにっ……!)
後悔した時には自分の血しぶきが宙を舞い、首から腰にかけて焼け付く痛みが走った。
……雲の少ない、爽やかに晴れた青空だった。
新たな能力に目覚めたのはどちらだったのか
あの日、運命は荒々しく回り始めた
END