第29章 ぬいと私~愛の告白は大声で~(謙信様:誕生祝SS2024)
(そうだとしたら、どうしよう……すごく……)
身体がかっと熱くなり、その熱は顔にまで達した。
だらしなく緩んでいる顔を見られたくないと俯くと、それをどう勘違いしたのか、謙信様はフウと大きなため息を吐いた。
謙信「秘密一つ許せぬ男など舞も嫌であろうな」
「ち、ちがっ!そんなこと一言も言っていないじゃないですか!
嫌どころか、今、凄く感激していて…顔が緩みっぱなしなんですっ」
告白しながら、熱い頬を謙信様の胸にこすりつけた。
そりゃあ、そういう干渉が嫌な女性も居るけど、私は『すごく愛されている気がして嬉しい』としか思えない。
謙信「本当か?ならば他の男と話すなと、視界にも入れて欲しくないと言っても良いのか?
あの日お前がなんのために城下に居たのか聞いても良いのか?」
「視界ですか!?視界に勝手に入ってきてしまうので、そこは許して欲しいですが…。
今みたいに願望を口にしてくれるのは全然構わないです。
要望にこたえられるようであれば努力しますから。
あと城下に出ていた理由ですが、謙信様の誕生日の贈り物を探していたんです。
だから皆は気を使って謙信様に『放っておけ』と言ったんでしょうね」
くっつけていた半身を起こし、懐に入れておいた小さな贈り物を取り出した。
「ちょっと事情があって今年の贈り物は買って渡そうとしたのですが、途中でこれが閃いたんです。
お誕生日おめでとうございます、謙信様」
手のひらよりやや大きいサイズの人形を渡した。
謙信「ありがとう……この人形は舞に似ている。
しかも同じ着物だな」
謙信様は私と人形を比べるように交互に見ている。
「これ推しぬいって言います」
謙信「オシヌイ…」
「私が居た時代のことなんですけど、遊戯(ゲーム)や本の登場人物に『この人大好き♡応援したい♡』って言うのを『推す』って言うんです」
謙信「ふむ…」
謙信様が私の解説を聞きながら人形を眺めている。
「それで『好きで好きでたまらない。いつも一緒に居たい』っていう人達が、自分達で推しの人形を作るんです。
人形のことをぬいぐるみと呼ぶので、推しの、ぬいぐるみ、略して推しぬいです」
こんなことを大真面目に説明し、謙信様も真面目に聞いてくれて、なんだかおかしな気分だ。