第29章 ぬいと私~愛の告白は大声で~(謙信様:誕生祝SS2024)
不意に謙信様が動き、さっきまで座っていたと思われる座布団に私を抱いたまま座りこんだ。
謙信「舞が出かけていたことも、兼続とのやり取りも怒ってはいない」
「?」
そういえば佐助君も同じようなことを言っていた。
他人に怒っているというよりも自分に怒ってる、と…。
どうして?と見れば、謙信様は悔しげに顔を歪めた。
俯き加減の顔に影ができて、昔のような仄暗さが漂っている。
謙信「自分に辟易していた。
舞が休日にどう過ごそうと構わないと思っていながら、他の男と共に歩いている姿を想像しただけで相手を斬り殺したくなる。
そればかりでなく会話の一部を聞いて、兼続を斬りつけるところだった。
…どうして俺はもっと寛容な男になれないのか、それが許せない。
こんな男では、いつ舞に愛想を尽かされてもおかしくない」
縋り付くように抱きしめられて私は身動きできなくなった。
「???
謙信様はもっと寛容で余裕のある男性になりたいんですか?」
謙信「舞のために無理やりにでもならなくてはならないだろう」
(そうなって欲しいって言ってないけど…なんで?)
寛容なと聞いて思い浮かんだのは、謙信様には失礼だけど信玄様や義元さんだ。
ゆったりと構えて、懐が深くて、なんでも受け止めてくれそうな大人の男性…。
「そういう男性も素敵ですが謙信様の魅力は違うところにあるじゃないですか。
逆に懐ひろーい、余裕たーっぷり、ヤキモチやきませーん、ていう謙信様は謙信様じゃない気がします」
謙信様のなりたい人物像を想像して、なんか違うと首を捻った。