第29章 ぬいと私~愛の告白は大声で~(謙信様:誕生祝SS2024)
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夜な夜なプレゼント作りにいそしみ、完成したそれを持って佐助君の部屋を訪れた。
謙信様のお部屋に行っても取り次いでもらえないから、天井裏から行こうという作戦だ。
佐助「君を天井裏に招待するのは大歓迎だ。
けど着物姿で天井裏を行くのは難しいから悪いけど俺の忍び服に着替えてくれる?」
なんでも春日山城の天井裏はもともと忍び対策が施されていたところを、更に佐助君が改造して、とんでもなくデンジャラス・セィーリングになっているそうだ。
佐助「準備は良い?」
「うん!」
長い袖や裾を折り返してなんとかサイズ違いを誤魔化した。
「最近、謙信様の様子はどう?」
佐助君は私の服装チェックをしながら、眉を寄せた。
佐助「もの凄く機嫌が悪くて部屋から出てこないんだ。
最低限の仕事だけ部屋で済ませて、謁見は全て延期だ。
誰かに対してっていうよりも自分に怒っているみたいだった」
「自分に?私じゃなくて?」
佐助君が神妙な顔で頷いた。
佐助「詳しいことはわからないけど、舞さんが何かしたから怒ってるんじゃないと思う」
「そう…」
廊下の件が原因じゃないなら、どうして引きこもってしまったんだろう。
佐助「気持ちの整理が着くまで誰にも会いたくないらしい。
取り次いでもらえないのは舞さんに限ってじゃない」
「そうなの……」
思っていたよりも謙信様の気の塞ぎようは酷いようだ。
服装チェックが終わったらしく、佐助君が立ち上がった。
佐助「今の謙信様は、天岩戸に隠れてしまった天照大神のようだ。
このままでは誕生日の宴どころか、影響は越後の平和にまで及ぶ。
早く謙信様を部屋から引っ張り出して欲しい」
「は、話が大きくて、ものすごく気後れしてるんだけど……」
佐助君は一度ジャンプして天井板を一枚外すと、もう一度飛んで縄梯子を設置している。
ジャンプ力と滞空時間に感心していると、作業を終えた佐助君が無音で畳の上に着地した。
佐助「俺なりに色々考えてみたけど、謙信様を部屋から出すのは君が適任だ。
君に対して怒ってるわけじゃないと言っても、謙信様が極端な行動をとる時は君が関係しているから」
「あー……それ、わかる。
わかった。部屋から出てもらえるよう頑張ってみるね!」