第29章 ぬいと私~愛の告白は大声で~(謙信様:誕生祝SS2024)
――――
(姫目線)
義元さんが色々なお店に連れて行ってくれたので、いいなと思うものをいくつか見つけられた。
でも結局高価すぎて手が出せず、どうしようかと立ち寄ったお店が小間物屋さんだった。
女性向けの商品が多い中、片隅に置いてあったウサギの人形にピンときた。
「よし!あれを作ろう」
義元「何か思いついたみたいだね」
「はい!色々案内してもらったのにすみませんが、やっぱり贈り物は作ろうと思います」
義元さんは気分を害する様子もなく、いいんじゃない?と頷いてくれた。
義元「気にしなくて良いよ。材料は?」
「手持ちのもので間に合うと思います」
義元「じゃあ急いで帰らなくてはいけないね。
けど謙信が羨ましいな」
「え?」
義元「君みたいな作り手が、毎年思いを込めて贈り物を作ってくれるんだもの。
どんなものより貴重だよ」
よっぽど素晴らしい匠だと思われているみたいで、慌てて否定した。
「そんな大層なもの作っていませんよ!」
義元「君が心をこめて作ったなら、素敵な品だと思うよ。
さあ大分時間を使ってしまった。早く城に帰ろう」
こうして気を利かせてくれた義元さんに促され、手ぶらで春日山城に帰ったのだった。