第29章 ぬいと私~愛の告白は大声で~(謙信様:誕生祝SS2024)
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義元『ほら、この簪なんかどうかな。
舞の髪色によく似合うよ』
『少し派手すぎませんか?』
義元『ううん、君にはこのくらい華やかなのが似合うよ。
でなければ君の可愛らしさに簪が影を潜めてしまうから』
『義元さんってお上手ですね』
義元『俺はお世辞を言わないよ』
『え……//』
今日の俺の脳内はどうかしている。
勝手に想像して、またしても頭にきていた。
舞が行きそうな場所ならば見当がつくが、義元がすすめる店など予想もつかない。
あてもなく探し続けたが、案の定、半刻(1時間)たっても見つけられなかった。
義元の場合、織物はもちろんのこと芝居、絵、陶器など、幅広い芸術を愛するがゆえに店を絞り込めない。
謙信「舞…どこへ行った?」
義元は舞が作り出す作品をこよなく愛している。
今のところ好意の対象は作品だろうが、いつその目が作り手に向くかわからない。
それが今日かもしれないと思うと居ても立っても居られなかった。
無意識に女を魅了する義元は、信玄と同等危険な男だ。
いつしか探し歩く足は早まり、道行く民は『謙信様があんなに険しい顔をされて一体何事だ?』と騒めいている。
夕暮れが迫り、気温がぐっと下がり始めた。
日の傾き具合で舞ならば城に帰っている頃だと、城へもどることにした。
城へ向かう帰り道、北風が吹きあれる中を優美に歩く義元が居た。