第29章 ぬいと私~愛の告白は大声で~(謙信様:誕生祝SS2024)
信玄も行先を知っていながら俺に教えるつもりはなく、佐助同様舞を放っておけと言っている。
舞は何か悩みを抱えていて、佐助だけに限らず、皆に相談を持ち掛けているのだろうか。
(悩み事があるなら真っ先に相談をしろと言っておいたが、俺では相談相手は務まらないと判断されたのか……)
信玄「けんしーん、余計なこと考えずにこれでも食って落ち着け」
謙信「む……」
唇に玉子色の蒸し饅頭を押し付けられ、やむなく口を開いた。
(甘いものは好かんが口をつけたものは責任をもって食べなくてはな。
………なんだこれはっ、甘すぎるっ!)
生地も甘いが、中から出てきた餡子が更に甘い。
律儀に食した己を悔やむ。
謙信「……………」
甘さの無限地獄に無言で耐える。
幸村「何やってるんですか、信玄様。
謙信様が蒸し饅頭を食って落ち着くわけないでしょうが…」
幸村が呆れ返っているが、なかなかどうして、不快な甘さが頭を冷やしてくれた。
相談相手として役不足ならば努力あるのみ。
(舞が安心して相談できるよう、傍で信頼を勝ち得ねば)
蒸し饅頭を胃におさめ、信玄と幸村が引き留めるのを無視して茶屋を後にした。