第29章 ぬいと私~愛の告白は大声で~(謙信様:誕生祝SS2024)
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信玄『今日はいつも以上に可愛いな。
どうだい、舞。
謙信が居ないことだし、これから俺と逢瀬にいかないか?』
『信玄様、駄目です。
私には謙信様が居るんですから』
信玄『少しくらい良いだろう?
ほら、今日は寒いから肩を抱いていてやろう』
『信玄様あったかい……//』
謙信「ちっ」
茶屋に向かう間、脳内で繰り広げられる空想に腹が立った。
信玄のことだ、俺が居ないことを良いことに、ここぞとばかり舞を口説いているだろう。
冗談で口説いているように見えて、信玄が半ば本気なのを俺は知っている。
それとも……
幸村『今日は謙信様が居ないんだってな。
だったらゆっくり茶でも飲めよ。
この店のおすすめはこれとこれと……』
『そんなに食べられないよ、幸村』
幸村『こんなに寒いんだ、少し肉をつけた方がいいぞ』
『だかはって、ほっへをつはまなひでくれまふ?』
(だからって、ほっぺを掴まないでくれます?)
……などと、気安いやりとりをしているかもしれない。
俺の前では行儀良い舞だが、幸村の前では気安く話し、砕けた態度だ。
幸村が少々……いや、甚だ羨ましい。
口が裂けても言わないが。
『もう、謙信ったらやめてよ……バカ//』
と言われてみたい。
(いや、今はそんなことを想像している場合ではない。
俺は何かを考えている?)
想像と妄想でイラついているうちに目当ての茶屋に到着した。
北風が強く吹いているせいで、暖を取ろうと茶屋は混みあっていた。
騒めく店内を見回すと信玄がこちらに背を向けて座っている。
(あそこか。信玄の図体で舞が見えんな)
近くまで行けば、気づいた幸村が『げ…』と顔をしかめた。