第29章 ぬいと私~愛の告白は大声で~(謙信様:誕生祝SS2024)
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謙信「佐助。舞と一緒に出掛けたと聞いたが、何故一人でうろついている?」
佐助「あれ、謙信様。
予定より帰りが早かったですね」
城下に着いて早々、駆けてきた佐助に会った。
聞けば休憩がてら舞と茶屋に居たところ軒猿の招集がかかったという。
その場に偶然居合わせた信玄と幸村に舞を預けてきたというので向かおうとしたのだが…。
佐助「できれば舞さんを放っておいてあげてください」
謙信「幸村はともかく信玄も一緒と聞いて、放っておけるわけがないだろう」
信玄は舞が人の女だろうが関係なく口説く。
幸村を適当にどこかへやって、舞と二人きりになろうとするに違いない。
佐助「気持ちはわかりますが、舞さんの心情的には謙信様に会いたくないと思います」
謙信「それはどういうことだ?
舞が俺に会いたくないと、そう言っていたのか」
佐助「いいえ、そういうわけではないんですが…」
謙信「納得できるよう説明しろ」
声を低めて問い詰める。
支城に出かける際は『早く帰ってきてください』と寂しげな顔をしていたのに、会いたくないとはどういうことだ。
しかも、そのように思われる理由が何一つ思い当たらない。
(何故だ?何故俺に会いたくないなどと……。
口に出さぬだけで、俺に対して何か思うところでもあったのか?)
以前のように激情に駆られて何かをすることはなかったし、束縛も…なるべく舞を尊重してきたつもりだった。
佐助「えっと…とにかくあまり深く考え込まず、お城で待っていた方が良いと思います」
ここまで問い詰めても事情を話すつもりはないようだ。
佐助を一瞥し、城下の遠くまで見通した。
信玄と幸村が出入りしている茶屋は目星がついている。
謙信「……俺のことは良い。さっさと行け」
佐助は振り返り振り返り、城の方へ走っていった。