第29章 ぬいと私~愛の告白は大声で~(謙信様:誕生祝SS2024)
佐助「舞さんは毎年手作りの贈り物をしていたから、城下で買ってくるのも新鮮じゃないかな?」
「え?」
佐助「君が選んでくれたと思えば謙信様も喜ぶと思うよ」
確かに誕生日プレゼントと言えば、いつも着物や羽織、小物類を作って贈っていた。
縫い物が好きだからというのもあるけど、他にも理由があった。
謙信様のところには色々なところから献上品が贈られてきて、どれを見ても一流品ばかり。
しかしどの品を見ても謙信様は興味を示さず、家臣や女中達に『好きにしろ』とスライドさせていた。
「謙信様って質素倹約というか…、あまり物欲がないような気がするの。
そんな人に何をあげたら良いのかわかんないよ」
佐助「大丈夫、もし何も見つからなかった時は君が蔵で保管している梅干しをあげれば良いよ」
秘密にしていた梅干しの存在を言われてぎょっとした。
「な、なんで佐助君が知ってるのっ!?」
佐助「舞さんが梅干を保管している蔵は、時々緊急避難場所に使っているんだ。
去年、君が梅干を作っていたのは知っていたし、梅干しの壺に名前が書いてあったからすぐわかった」
「そっか、なんだか恥ずかしいな。
年数が経つと美味しくなるだろうから蔵に置かせてもらっているの」
5年くらい熟成させてから謙信様にプレゼントする計画なので、できればまだお披露目したくない。
佐助「梅干しは最終手段にして試しに城下に出てみよう。
実はちょうど城下に行かないか誘いに来たところなんだ」
「そうだね、行ってみようかな……」
手持ちのお金では大したものは買えないと思うけど、部屋に閉じこもっていても良い案は浮かばなさそうだ。
急いで出かける支度をして、私は佐助君と一緒に城下へと出かけたのだった。