第2章 姫がいなくなった(政宗&蘭丸くん)
蘭丸「そう!500年後は美容院で髪を切るのはもちろん、髪色を変えたり、傷んだ髪をサラサラにする「とりーとめんと」もできるって、前、話してた!
『ますから』や『ねいる』はちょっとわかんないけど、500年後は化粧も多様化していて『あいからぁ』『あいらいん』っていうのを使って、目をぱっちり見えるようにするんだけど、それを落とすためには……」
政宗「?」
蘭丸「『めいくおとしが必要』って言ってた!」
政宗「それでいくと『ますから』は化粧品ってことか……」
蘭丸「つまりさ、舞様は美容院で髪を綺麗にしてもらって、綺麗にお化粧できる道具と、それを落とすものが欲しかったんじゃないかな。政宗様のために」
政宗「俺のため?」
目を瞬かせる政宗に、蘭丸が頬を膨らませた。
蘭丸「政宗様、にぶーーーい。女の人が綺麗になりたいとか、綺麗でいたいっていうのは自分のためでもあるけど、好きな人がいたら、なおさらそう思うんじゃないの?」
政宗「……」
押し黙った政宗に、蘭丸が言葉を続ける。
蘭丸「舞様が『行きたい』『欲しい』で、500年後に帰っちゃったなら、絶対戻って来るよ。
舞様は政宗様のこと大好きだもん。
『政宗のところへ帰りたい』って思ってくれる。
きっと政宗様に会えない時間を使ってとびきり綺麗になって、帰ってきてくれるよ」
それまで張りつめた空気を漂わせていた政宗が、表情を崩した。
政宗「蘭丸の話はなんの根拠もないが……なんだかそんな気がしてきた」
蘭丸「そうそう♪政宗様に深刻な顔なんて似合わないよ。
あ、そうだ、元気づけてあげたお礼に美味しいもの作ってほしいな☆
政宗様も舞様が留守のうちに、新しい料理でも練習したら?」
政宗「新しい料理か…いろいろ作ってみるのもいいな。
ここの連中が肥えた頃には舞も帰ってくるだろう」
蘭丸「…安土城の食費をあまりあげないでよ、政宗様。信長様に怒られても知らないんだから」
政宗「信長様はそのくらいで怒らないだろ」
蘭丸「政宗様が左から耳に聞き流しているだけでしょ。まったく…落ち込んでもすぐ回復するあたり、政宗様らしいよね」
政宗が軽快に笑った。
さっきまでの焦燥の色は消え、いつもの姿だ。