第2章 姫がいなくなった(政宗&蘭丸くん)
蘭丸「………ねえ!政宗様!もしかしたら、もしかしたら……っ!」
何か思いついたような蘭丸に、政宗の蒼い瞳が鋭くなった。
政宗「もしかしたら、なんだ?」
蘭丸「舞様は500年後に帰ったんじゃない?本人は寝ていたから帰ったっていう表現はおかしいけど…。
俺、舞様がこの時代に現れた瞬間をたまたま目撃してるんだ。星屑みたいに輝いて、音もなく突然現れたんだ!」
政宗「音もなく……突然……」
常ならば何事も楽しむ政宗の顔も、恋人が時を越えていってしまった可能性に表情を曇らせた。
蘭丸「変なこと聞くけど、舞様、最近元の時代に帰りたいな…とか言ってなかった?」
蘭丸が首を傾げながら尋ねると、耳飾りがシャランと揺れた。
政宗は記憶を辿り頷いた。
政宗「……帰りたいとは言っていないが、『びよーいん』に行きたいだとか、『うぉーたーなんとかのますから』や『めいく落とし』が欲しいとか言っていたな。あと俺に『ねいる』をした爪を見せたいとかなんとか……。
言葉の感じから、あっちの時代のものだ」
蘭丸「なんだか呪文みたいな言葉だね。
『行きたい』とか『欲しい』っていう気持ちが、舞様が自覚している以上に強くなっていて…だから帰っちゃったんじゃないかな。憶測だけど」
政宗「…………帰ってくると思うか?」
二人きりの廊下に、政宗の寂しげな声が響いた。
いつも自信に満ち溢れた政宗が見せた不安を、察しの良い蘭丸は直ぐに気が付いた。
蘭丸「そうだ、思い出した。『びよーいん』は美容院だよ、政宗様!」
政宗「美容…院?なんだそれ」
蘭丸「えーっと、すぐ思い出すから待ってて。
確か…そう!髪を切るところだって言ってた!」
政宗「髪?」
蘭丸が顔を輝かせて大きく頷いた。