第28章 狐の化かし合い(光秀さん)(R-18)
光秀「俺と一緒に居るのは苦痛か?」
「そ、そうじゃなくてですね、私達、恋仲にはなりましたけど夫婦じゃないんです!
2晩も留守にして、近所の方に言われてしまうでしょう?
私には叱ってくれる両親もいませんし、しっかりしないと」
寂しそうな顔をしたって騙されない。
ここで甘い顔をしたら、してやったりの顔になるって想像できる。
光秀「わかった。食事をしたら家まで送る」
「ここから家は近いですし大丈夫です。
お店の前で別れましょう」
光秀「舞」
名前を呼ばれて下向きだった視線を上げると、光秀様の顔が近づいてきた。
光秀「あまり寂しいことを言うな。
一瞬でも長く居たいと、そう思っているだけだ。
お前を送っていきたい…」
光秀様が卓の向こうから身を乗り出して頬に柔らかい唇を押し当ててきた。
食事の注文をとりに、こちらに歩いて来ようとしていたお店の人が知らんふりをしてくれて、お店の奥に消えていった。
この人ときたら、人の気配を察せるだろうに、なんてことをしてくれたんだろうか。
言ってることも意地悪なのか本心なのか、ちっともわからない。
(この人の悪戯なのかもしれないのに胸が浮き立ってどうしようもない)
離れていく色っぽい唇に目を吸い寄せられる。
追いかけて、追い付きそうになかったから光秀様の着物の襟を引っぱって引き寄せた。
私の唇に光秀様の唇が追い付いて、柔らかな感触と、温かい吐息を味わう。
どうせお店の人は奥に引っ込んでしまって誰もいない。