第28章 狐の化かし合い(光秀さん)(R-18)
「光秀様、こんなところでどうしたんですか?」
光秀「……なんでもない。帰ろう」
おかしな行動を追求しないのも身のため。
狐には狐だ。
「…ええ、帰りましょう。
明日の逢瀬が楽しみです。
光秀様にたくさんお世話になったので、いっぱいお礼しなきゃいけませんね」
光秀「礼をするのは俺の方だ」
「え?」
『狐同士、化かし合え』
信長様の声が頭に響いた。
「やだ、お礼をされるようなことしていませんよ」
光秀「どうだかな…」
(化かし合っても、時に言えないことがあっても…)
「…愛してますからね、光秀様」
光秀様が屈む気配がして、そうっと口づけをされた。
想いがこもった口づけは短くても心を満たしてくれた。
光秀「愛している」
見つめ合った瞳の奥に、提灯の明かりが狐火のように揺らめいていた。
END