第28章 狐の化かし合い(光秀さん)(R-18)
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日付が変わった頃、信長様に挨拶をして天主を後にした。
ふらついて長い階段を踏み外さないようにゆっくり歩いていると階段下に光秀様が現れた。
(っ、ちゃんとしないと)
震えている両足に力をいれ、痛む腰に鞭打って姿勢を正した。
「光秀様、御殿を出ても大丈夫なんですか?」
光秀「四半刻前に監視が解かれた。お前の方はどうだった」
光秀様は手短に告げ、私の頭の天辺から足先まで目視した。
「今夜は強いお酒を用意されていて、やっぱり飲み比べには負けてしまいました」
2人寄り添って歩き出す。
大丈夫、距離感は来る時と同じ。
光秀「身体は…?」
唇を噛むくらい普通だよねと、逐一行動を確認する。
「光秀様の言う通り身体を検められてしまいましたが、なんとか私達の仲を認めてくださいました」
光秀「信長様にどこを触れられた?」
仲を認めてもらったことよりも私の心配をしてくれる。
質問を流されても、そっけなくされても、やっぱりこの人が大好きだ。
「怒らないでくださいね?」
光秀「またそれか。九兵衛だけで十分だったんだが…」
ちょっと渋い顔をして、内心凄く渋っているのがわかって吹き出した。
(ああ、こんな状況でも笑えたじゃない、私)
きっと光秀様の隣に立つためにしたことを後悔していないからだ。
愛していない男に抱かれる。
できればこの先でそういう経験はしたくないけれど、もしもの時、今夜のことが私の心を強くしてくれる……かもしれない。
その時にならなければわからないものだ。
(信長様に抱かれたら心が壊れると思ったのに、不思議…)
未来を見据え、必要のある経験だと思えば、こうして平静でいられる。
「横抱きにされて、触られてしまいました」
光秀「触られただけか。指を挿れられたりは…」
慌てて暗い廊下の前後を確かめた。