第28章 狐の化かし合い(光秀さん)(R-18)
「ん……はぁ、はぁっ、ぁ、信長様、なんで……」
やっと唇が離れた頃には身体から力が抜けていた。
身体を検められるとそっちばかり気にしていたから、こんなふうに突然唇を奪われるとは思っていなかった。
しかも光秀様以上に濃厚で、自分が女だと自覚させられるような、嫌だったはずなのに気持ち良くさせられる……そんな大人の口づけだった。
どちらのものともわからない唾液が、私の口の端から顎へと零れていた。
信長「あやつの女になるならば他の男を知っておけ」
「え?」
太い指が伝う唾液をぬぐい、私の唇にそれを塗り付けた。
ぬるっとした感覚はいやらしいけれど、塗り付けている信長様の表情は淡々としていた。
信長「安土の白狐に可愛がっている女が居ると知れ渡れば狙われる。
あやつの弱点になりたくなければ、多少のことは自分で切り抜け、動じない女になれ」
「あ………ん!ふっ……」
また唇を吸われた。強い酒を飲んで、呼吸もままならないせいで頭がくらくらする。
抜かりない光秀様を攻撃するのが難しければ、茶屋で働いている恋仲を襲って人質にすればいい。
人質ならばまだいいのかもしれない。
恨みや憂さを晴らすために、この身を食い荒らされる可能性だってある。
信長様に言われてゾッとした。
切り抜けられるだろうか。
切り抜けられなかったとして、動じない女に…私はなれるのか…。
今でさえ権力を恐れ、舌を噛むという選択肢をとれずにいるのに。
「ん、んっ」
不安に押しつぶされそうになって涙が滲んだ。
涙なんて駄目だ。動じないというなら感情を露わにしちゃいけない。
(私は光秀様の隣に居られる?)
こんなに弱くては彼の足手まといになるかもしれない。
信長「ただの男ならば良いが、あやつの隣はこの日ノ本で1、2を争う危険な場所だ。
理解して恋仲になったかと思えばそうではない、か…」
「…………」
悔しいけど、両想いだったのが嬉しくてそこまで考えが至っていなかった。
信長「今からでも遅くない。俺のものになるか?」
「え……?」
裾の乱れているところから、信長様の手がするりと入ってきて太ももを撫ぜる。
火照っている身体が素肌の刺激にピクンと反応した。