第28章 狐の化かし合い(光秀さん)(R-18)
「信長様っ!?すぐに降りますので…っ!」
信長「阿呆。用があって引き寄せた。
すぐ降りようとするな」
「で、でもっ」
密着する身体に落ち着かない。
しかも相手が信長様となると温もりを感じるだけでも無礼にあたる気がして空恐ろしい。
こうなったらご迷惑をおかけしないように身じろぎひとつせず、大人しくするしかない。
信長「もう観念したのか」
「信長様はそんなことしないとは思いますが、死にたくありませんので…」
信長「ふっ、あやつの女らしいな」
信長様は腕に私を抱いたままでお酒をあおった。
1杯目はすぐに飲み干し、2杯目をあおると私の顎を強引に上向きにした。
「んっ、ふっ!?」
濡れた唇が私の唇を割りいってきて、お酒を流し込まれた。
顔を上向きにされているのでお酒は勝手に喉のほうに流れていき、反射的に嚥下した。
「ぅ………」
ちびりちびりと飲んでも酔っていた強い酒が、盃1杯分、一気に胃に流れ込んできた。
喉も胃もカーっと熱い。
「んっ、やっ、んんっ……!」
後頭部をがっちりと抑えられ唇を塞がれた。
昨日口づけを知ったばかりの身で、今日は違う男性の唇を知ってしまった。
信長様の匂い、お酒の味。
舌の厚さも絡め方も違う。
額に当たる前髪の感触も。
(やだ、やだっ……)
光秀様は時に強引だったけれど、拙い私に教え込むような口づけだった。
でも信長様の口づけは違う。
相手を蕩けさせ、気持ち良くさせる術に長けた大胆な口づけ。
ちゅっ、くちゅ……
味わうように舌を絡められ、吸われる。
顔の角度を変えては私の唇を食み、歯列をたどり、口蓋までもいいようにされた。
「ん…っ!んんっ~~~!」
急激な酔いで抵抗する両手に力が入らない。
信長様の着物の襟に弱々しく手を乗せたに過ぎず、受け入れていると思われても仕方ない反応だった。
チュク、チュプ……
舌の触れ合う音が鼓膜に伝わる。
「…ふっ……んん!」
これがその辺の男性ならば舌を噛んで逃げる。
けれど信長様を傷つけるのは到底私にはできず、最終的にはされるがままになってしまった。