第28章 狐の化かし合い(光秀さん)(R-18)
――――好きなんだ
はっきりと確信して、信じられない思いで光秀様を見た。
のらりくらり長引かせる話し方はイラっとするし、きっとこの人と気の合わない人は頭が痛くなるだろう。
(光秀様っぽい話し方だな)
思わせぶりのような、しかし本気とも冗談ともとれる話し方。
人によって判断に迷うところだろう。
(ここに光秀様が居るのは仕事じゃない。
信長様に掴まってしまった私を助け出してくれたんだ)
受け手に判断を任せるなんて、この人はなんて厄介な人なんだろう。
こういう人だと、とうに分かっていたことだけど、自分の好意さえ相手に委ねるなんて普通じゃない。
相手が冗談だと思えば冗談にして、相手が光秀様の想いに気づいたら打ち明ける。そういう手法だ。
(面倒な人。でもそんなところも好きです、光秀様)
想いを込めて光秀様を見つめる。
ここからはあなたに逃げられないよう、躱されないよう、直接的な言葉で押していくしかない。
光秀様の気持ちをハッキリと聞きたくて勝負に出た。
「つまり光秀様は私のことをずっと気にしてくれていて、信長様に仕事のムラを指摘されてしまうほど好きということで良いのでしょうか?」
外れたらとんでもなく恥ずかしい問いかけ。
しかし光秀様に誤魔化されないようにするためには必要なことだ。
光秀「そう思うか?」
「ええ、そう思います。本当のところどうなんですか?」
草木も眠る深い夜。静かな部屋でただ返事を待つだけというのは少々気まずかった。
早く返事をして欲しいと気まずさに耐え切れなくなった頃。
光秀様の唇が弧を描き、そして頷いたのを何をも見逃さず私は見ていた。
(……頷いた)
こうも受け入れがたい事実を目の前にすると、身体は動かなくなるらしい。
瞬きも忘れて美しい顔にくぎ付けになった。