第28章 狐の化かし合い(光秀さん)(R-18)
(光秀様の行動の1つ1つが私を守ることに繋がってる…)
こみあがってきた気持ちを急いで潜めた。
早とちりして夜伽の件でさんざん恥をかいたのだ。ここで光秀様の気持ちがどうか早合点するような真似はしない。
光秀「店に忍ばせていた部下から舞の働きぶりも聞いていた。
お前ほど大福を売りさばくのが上手な娘は居ないそうだな?美しい見目を巧みに利用して男を手玉にとっているとか」
「えっ!?商売柄愛想は振りまいていますが、手玉にとるなんてしていません。というか部下って誰ですか」
店の人達の顔を思い浮かべていると、白く長い指が伸びてきてスルリと頬を撫でてきた。
たったひと撫でですっかり動揺して、光秀様の手首を掴んで止めさせた。
細いように見えて骨太の手首に、心臓が音を立てる。
「私のことはどうでも良いんです。
信長様が気づいたという光秀様の気持ちとは一体何のことですか?」
光秀「信長様は俺の数々の奇行に違和感を持たれ、人を使って調べさせた。
そこに浮上したのが舞だった」
「わたし…?」
光秀様がまたしても髪に唇を押し付けてきた。
繰り返される行為に視覚を刺激されて、頬が火照(ほて)る。もはや隠しようもなく真っ赤になっているはずだ。
光秀「いつだったか信長様に『舞という女は何者か』と問われた」
「み、光秀様はなんとおっしゃったのですか」
光秀「事件解決のために協力してもらった町娘だと答えておいたが、信長様は納得していなかった。
信長様が舞に接近したと九兵衛から知らせが入ってからは、連携して警戒はしていたんだがな。
今夜は立て込んでいて手を回すのが遅くなった」
(わかった。光秀様は私のことが……)