第28章 狐の化かし合い（光秀さん）(R-18)

『例え信長様でも応えるつもりはない』と遠回しに伝えるためだったのに、結果的には自分の首を絞めてしまった。


光秀「言葉では信長様は信じず、舞の体を検（あらた）めるはずだ。
　そこで男に抱かれた痕跡があればあるいは、というところだ」

「か、身体を検めるって、そんな」


夜伽と同じくらいの衝撃を受け、泣きそうになっていたところでまたしても髪を引かれた。

頭皮に痛くない程度の軽い刺激が私の冷静を呼び起こしてくれた。


光秀「体を検めた時になんの形跡もなければ信長様は必ず手を付ける。
　信長様の妾になるか、今夜俺に抱かれるか、選べ」

「選べって、そんな……急すぎてなんだか……」

光秀「登城が明日ともなれば急だと言っていられない。
　お前が安請け合いした結果だ」

「う……」


信長様に抱かれないために光秀様に抱かれるなんて、そんな選択肢があっていいのか。
光秀様が大げさに言っているだけじゃないかと考えた。

それに今夜抱かれたとしても、また明日になれば光秀様は姿を消すつもりなんだろうと思うと嬉しくないし悲しい。


（でもやっぱり、信長様……おかしいよね）


信長様に時々感じていた違和感を、どうしても無視できない。


「待ってください。信長様はこの間『様子を見ている』と言っていたんです。　
　信長様と私は親しいと周知させて何か待っているような、そんな感じがしたんです」

光秀「信長様が様子を見ていると言ったのか」

「はい」


妾としての資質があるか様子見をしていたのかと思ったけれど、今考えればやっぱりおかしい。


「どういう意味かわかりませんが着物の話をした時、複数の人間に対して『面倒』とおっしゃっていたんです」

光秀「面倒？そのあたりを詳しく聞かせろ」


鋭い目つきに内心怖いと思いながら、今夜天主でお話したこと、そして今まで感じた違和感について説明した。