第28章 狐の化かし合い(光秀さん)(R-18)
(私にとって選択肢があまり良い内容ではないから気を使っているんだ)
この人は相手を怒らせるような会話を繰り広げ、実のところ会話の裏に気遣いを隠している時がある。
光秀様を理解していない人は怒るだろうが、私といえば……裏を読み取るのが好きな手合いだ。
もちろん他人の腹を探る趣味はなく光秀様限定だ。
(わかりにくく隠されるほど愛しいなんて誰にも言えないな)
ちょっと私おかしいよね、と自嘲していると……
光秀「俺に抱かれるか」
(絶対私おかしいから抱かれ……え!?)
思わず耳に指を入れてぐりぐりしてしまった。
「耳の調子がおかしいようです。もう一度言っていただけますか?」
光秀様は手にしていたひと房の髪に唇を押し付け、妖しさたっぷりに微笑んだ。
何もかも秘めた光秀様は恐ろしく妖しくて、誰よりも、今夜お会いした信長様よりも美しかった。
光秀「信長様が嫌なら、今夜俺に抱かれるか?と言った」
(空耳じゃなかった。何を言い出すの、この人は!)
「何故そうなるのかお聞きしてもいいでしょうか」
光秀「今の段階で信長様は舞に本気ではなく遊びだ。
お前に他の男の気配があれば手を引く可能性が高い」
それでも可能性が全くなくなるわけじゃないが、と光秀様は付け加えた。
「なにも本当に抱かなくても口頭で恋仲が居ると伝えれば……あ」
それが出来ないことに気づき、私はしまったと口ごもった。
光秀「気づいたか?城に何度も呼ばれているうちに、お前は言ったはずだ。
『どんな男にも応えるつもりはない』とな」
「その通りです…」
しかも信長様にそう言ったのは今日だ。
明日になって恋仲が居ると言っても、夜伽を断るための言い訳と捉えられるだろう。