第28章 狐の化かし合い(光秀さん)(R-18)
相変わらず無表情で、ただなんとなく怒っている気がして髪を引かれたほうに頭を傾けた。
少しほつれのある髪を弄びながら光秀様は言った。
光秀「信長様は酒に酔わない。ということは勝敗がついているも同然だ。
そこで明け方まで帰さないというなら、勝敗結果を理由に舞を抱くつもりだ」
「信長様はお酒に酔わないんですかっ!?
明日こそって、嘘、どうしよう……そんなつもりじゃ…」
(今夜は大丈夫だったから明日もなんて甘かった!)
繰り返すつめの甘さに後悔し、明日をどう乗り切ろうか考えた。
(仮病を使う?だめだ、どんな理由であれ、信長様との約束を破ったら罪人決定だ)
結果が出ている勝負を受けるしかないと悟り、気持ちが萎んでいく。
光秀「相手を知らずに軽々しく勝負するのは無謀だ」
「お言葉ですが信長様のことを知る機会なんて無かったですし、お断りするのも失礼にあたるじゃないですか」
私の言い分に光秀様は口角だけ上げて冷笑した。
光秀「俺を化かした女がよくも簡単に誑かされたな」
「っ、化かすって………なんのことか知りません」
あの夜のことは忘れたと証明するために、言いかけた言葉を飲みこんだ。
光秀様に抱かれたいがために三成様の名を呼び続けたあの夜のことなんか私は知らない。
暗にそう示すために嘘をついた。
(忘れるって約束したんだから知らないふりをするんだ)
あの夜のことを持ち出してきた光秀様を責めるべきなのかもしれないけれど、責める行為こそ自分が覚えていると明かしてしまう。
ため息を吐く私を、光秀様はからかうように見つめてくる。