第28章 狐の化かし合い(光秀さん)(R-18)
秀吉「どういうことだ!その娘が信長様に危害を加えるかもしれないから、部屋に張り付いてろって言ったのはお前だろう?」
裏の情報を得て舞が危険人物だと判断してのことだと思っていた。
が、今にして思えば警戒して見張っても舞にその気配はなく、寧ろ好感しか持たなかったのだからおかしなことだ。
姫から聞いた舞の話と本人を実際目にした印象から得られたのは、信頼できる誠実な人物像で、光秀の警告とは一致しなかったのだ。
秀吉「信長様に危害を加えるかもしれないと言ったのは嘘で、この娘が心配だっただけか?」
秀吉が呆れを含んだ視線を送ると、切れ長の目が他者を拒絶するように冷たく細められた。
いつものごとく光秀が何も言うつもりがないのだと秀吉は察した。
秀吉「自分の店の人間を俺達に見張らせておいてその態度か」
光秀「俺らしいだろう?とにかくさっさと行け」
秀吉「お前と話していると頭が痛くなる」
光秀「俺もだ」
秀吉「何をっ…!」
ぱー―――ん!と遠くで炸裂音のような音が響き渡り、秀吉は言葉を切った。
銃声とは異なり、地面に何か叩きつけて弾けた音だった。
光秀「今度はかんしゃく玉が使われたようだな。
ここで遊んでいないで早く行った方がいいんじゃないか?」
秀吉「誰が遊んでるって?」
光秀が顎をしゃくって秀吉を促し、自分は音を立てずに歩き出した。
秀吉にも曲者にも興味はないと後ろ姿が語っていた。