第28章 狐の化かし合い(光秀さん)(R-18)
――――
階段を下りる際に舞が足を踏み外しそうになったので、秀吉は仕方なく舞をおぶることにした。
秀吉「しっかり者のお前も酒を飲めばこうなるんだな」
「申し訳ありません…」
秀吉「信長様を相手に酒を飲んでいたんだ。潰れていないだけましだ」
「はい……」
舞はすっかり身を任せ、秀吉が言ったことを理解できているのか微妙な返しをしている。
秀吉「気持ち悪くないか?水を飲んでから帰ってもいいんだぞ?」
「大丈夫です…。姫様が言っていましたが、秀吉様は本当に面倒見が良いのですね」
クスクスと笑いを漏らす舞に、秀吉は罰が悪そうな顔をした。
秀吉「お前たちはそんなことを話してるのか?仲が良いっていうのは本当なんだな」
「はい、姫様はとても可愛らしくて…。良くしてもらっております」
少し軽くなった口が、普段隠している本音を吐き出した。
嘘のない言葉に秀吉は完全に警戒を解き、本来の穏やかな表情を見せたが背負われている舞が気づくことはない。
秀吉「そうか。あいつも同年代の友人が少ないと嘆いていた。
これからもよろしく頼むぞ」
「もちろんでございま…す……」
その言葉を最後に腕から力が抜けて、すうすうと寝息が聞こえてきた。
秀吉「………まーったく、こんなに無防備でよく信長様に手を付けられなかったな。
曲者が出なければ食われてたぞ、きっと。
……明日はどうなるかわからないがな」
秀吉がずり下がった体を抱えなおしていると、暗がりから予想外の人物が現れた。
そこまで気配を消す必要があるのかと腹が立つほど静かに歩いてくる人物に、秀吉は舞を隠すように対峙した。