第1章 日ノ本一の…(上杉謙信)(R-18)
焦って胸を押さえていると、静かな怒気を含んだ声が響いた。
謙信「静華……来い」
「え…?は、はい」
手をひかれずるずると連れて行かれる。振り返ると佐助君は無表情で手を振ってくれていて、兼続様は少し焦った顔をされている。
軽くお辞儀をしてお別れして、謙信様の後に続く。廊下を歩く歩幅が広くて、着物の裾がからまる。
「あ、あの謙信様っ、何か怒っていらっしゃいますか?」
そこはかとなく…ではない、ビシビシと不機嫌が伝わってくる。
空気が緊張し、身体が冷えるようだ。
謙信「……静華、お前は俺のものだというのに、先程兼続にその身体を触れさせ、そればかりではなく胸を高鳴らせていなかったか?」
ジロリと睨まれて、心臓が縮みあがった。
「いえ、あれは不可抗力で…すごく良い香りがして……」
言ってからしまったと口を閉じる。
謙信「ほお?兼続が良い匂いとな……ならば、兼続に城の堀の掃除でも命じるか」
「お、お堀の掃除なんて泥臭い仕事を兼続様に命じないでくださいっ」
謙信「ならば俺のこの不快な気持ちをどうしてくれる?ああ……ひとつ手はあるか…」
意地悪そうな顔をされて、嫌な予感しかしない。
掴まれていた手首にぐっと力が加わった。
謙信「もっと休ませようと思ったが、辛抱ならん。今からお前を抱く」
「えっ!?ま、まだ全然痛いんですけどっ!?それにまだ…」
この間と同じく昼前だ。明るい時間に交わるのは遠慮したい。
謙信「少しは回復しただろう。妬かせておいて罪を償わないのは感心しないな?」
暗い笑みを向けられ、背筋が凍った。
「う……はい」