第28章 狐の化かし合い(光秀さん)(R-18)
信長「しばし放っておけば居なくなる。
その件は他の者に任せ、舞を住まいまで送ってやれ」
秀吉「曲者を放っておくのですか?」
信長の先見が外れることはないから、その通りにすれば物事は収まる。
秀吉はわかっていながら、どうしても解(げ)せなかった。
舞も同様にどうしてという表情だが、信長が理由を説明することはなかった。
信長「言う通りにしろ。さすれば事態は収まる」
秀吉「はっ。では舞を連れていきます」
信長「こやつは酔っている。気を付けてやれ」
信長は舞に向き直って自信に満ちた笑みを浮かべている。
赤い目に何か企みが含まれているような気がして、舞は小首を傾げた。
信長「舞、飲み比べは一旦中止だ。
明日の夕方、再び登城を命じる」
二日続けての召し上げに舞は目を丸くした。
夕方の呼び出しということはまた帰りが遅くなるか、はたまた夜明けまで、ということだ。
「明日、飲み比べの続きをするのですか?」
問いかけると信長は不敵な笑いを浮かべた。
(何だろう…。ただ飲み比べしていたつもりだったけど、こんなにこだわるなんて何か理由があるのかな)
舞は胸の内に小さな不安を覚えた。