第28章 狐の化かし合い(光秀さん)(R-18)
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(第三者目線)
夜半前(22~0時)の頃、すっかり寝静まっていた安土城内に男の声が響き渡った。
家臣「曲者だ!城内に曲者がいるぞ!!
そこの者っ、止まれ!」
男の声を聞きつけた者達が『曲者だと!?』と血相を変えて部屋から出てきた。
曲者は逃走をしているのか、それを追いかけている家臣の男の声も移動していた。
家臣2「曲者はどこだっ!?」
家臣3「厨の方角から声がしたぞ」
家臣4「そうか?俺は城の裏手から聞こえたが…」
家臣達は寝間着姿であちこちを走り回った。
曲者だと叫ぶ声は移動を続けて混乱を呼び、起き出してきた人間の声や足音まで加わると城内は収集のつかない騒ぎになった。
秀吉「信長様」
一向に収まらない騒ぎの報告のため、秀吉が人払いされていた天守を訪れた。
信長「入れ。まだ騒ぎは収まらんか?」
秀吉が天守に足を踏み入れると、信長の正面には酒で頬を染めた舞が座っていた。
美しい着物姿に一瞬目を奪われたが、思い直して舞の隣に行き跪いた。
秀吉「城内に曲者の侵入を許し、未だに捕えられておりません。相手は大層足が速いようですが城外に出ようとせず、場所を移して逃げ回っております。
三成に場を任せてきましたが目的がわからず難儀しております」
曲者だと叫んでいる声に翻弄されているふしがあり、曲者と同様声の主も追っているところだという。
舞は笑みを消し、不安そうに盃をおろして信長と秀吉を交互に見ている。
不可解な出来事だというのに信長は動じることなく酒を煽った。