第28章 狐の化かし合い(光秀さん)(R-18)
「……はぁ」
お酒ってこういうものかと一息つくと、信長様が面白そうに笑った。
信長「そのように一気に飲んで、ひっくり返るなよ」
「大丈夫だと思います、今のところ…ですが」
信長「ふっ、貴様は酒豪の類であったか?」
徳利が伸びてきて勝手に盃が満たされた。
「どうでしょうか。私も今夜初めて飲んだのでわかりません」
信長「貴様の酒飲みがどれほどか見てやろう。
今夜は付き合ってもらうぞ」
お酒で少々緩んだ気分そのままで信長様に訊ねた。
「何かの間違いで夜伽に呼ばれたのかと覚悟してきたのですが、お酒のお相手で安心いたしました」
信長様が酒を飲むのを一瞬やめて、見惚れるような笑みを浮かべた。
信長「なんだ?そちらの相手を望むなら、相手をしてやるぞ?」
「っ」
口に含んだお酒を吹き出しそうになった。
信長様がこんな軽い感じで女性を誘うのは意外だったし、夜伽なんて今の今まで考えていなかったという態度に急に恥ずかしくなった。
(勝手に夜伽だと思い込んじゃって恥ずかしい!)
しかしこれで少なくとも今夜は夜伽を恐れる必要はなくなった。
「い、いえ、是非お酒の相手が良いです」
緊張でがちがちになっていた気持ちが嘘のようにほぐれた。
信長「酒に酔った貴様はなかなかに良いな」
肩から力を抜いてお酒を飲み始めると、俯き加減にしていた頭をひと撫でされた。
大らかさを感じさせる手は大きく、信長様にそんな気はないと思うけれど私を庇護するような安心感を覚えた。
「酒に酔っていない私は良くない…という意味でしょうか?」
信長「不快な女を話し相手に呼び出さん」
「ありがとうございます」
少しだけ近しくなれた気がする。
照れながらお礼を言うと、信長様はまた機嫌よくお酒を飲み始めた。