第28章 狐の化かし合い(光秀さん)(R-18)
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(姫目線)
信長様が茶屋を訪れてからというもの、3日に1度という頻度で安土城に召し上げられるようになった。
しかも城に来る前に飴屋で金平糖を買ってくるようにとおつかいとお小遣い付きという、おかしな召し上げだ。
最初『姫様が金平糖をお望みなのかな?』と思って買っていったら、なんと信長様が食べ始めた。
秀吉「金平糖は信長様の好物なんだ」
「……そうなんですね」
初日、秀吉様は金平糖のお使いのことはご存じなく、食べ過ぎを心配して渋い顔をしていた。
まさか強面の信長様の好物が金平糖だなんて、町の人達が聞いたら面白可笑しく広がるだろう。
そう思って金平糖のことは私の胸にしまいこんでいる。
信長様は私を召し上げて半時お話しをすると帰してくれた。
学のない町娘と話をして何が楽しいかと思うけれど、私としては秀でた見識を持つ信長様との会話はとても勉強になった。
けれど頭の良い信長様もわからないことはあるらしく…
信長「秀吉、何故お前が毎回同席している?」
案内役の秀吉様が毎回同席しようとして信長様に煙たがられていた。
それでも秀吉様はめげることなく、毎回渋い顔で進言していた。
秀吉「信長様と未婚の女を二人きりにするわけにはまいりません」
信長「話だけだ」
秀吉「それでも噂というのは広がるものです」
信長「良いから外に出ておれ。貴様が居るとうるさくてかなわん」
天主から追い払われても秀吉様が襖に張り付ついているのは毎度のことだ。
信長「やれやれ、貴様を呼び出すと秀吉がうるさい」
隠そうともしていない秀吉様の気配に信長様は呆れていたけれど、私としては男性と二人きり、それも信長様と二人きりは荷が重いので助かっている。
「信長様が心配で仕方ないのですよ」
信長「貴様のような小娘に何ができる?短銃でも持っているならいざ知らず」
短銃という言葉に襖の向こうで慌てて立ち上がる気配がして、信長様はうるさそうに顔をしかめた。