第28章 狐の化かし合い(光秀さん)(R-18)
店を移る前と後では、明らかに舞は変わった。
化粧もせず、おさがりの小袖をお直しして着ていた地味な女はどこにもいない。
職人2「舞は誰にでも優しいが、心を渡すことはしないんだとよ。
舞に惚れた男は数多く居るが、どんな男にもなびかねぇだろ?
いつ誰の女になるかって男達は気が気でなくて、踏ん切りがつかずに惚れたまんまで居るしかないそうだ」
職人1「なるほどなぁ。だから惚れれば地獄か…。
ん?おんなじ浮名を流してる男が居なかったか?」
職人2「そりゃあ、あいつだ。名前なんて言ったかな。
だがあっちは質の悪い男だからなぁ」
職人1「そうだな」
同じ浮名を流している似ても似つかない二人に職人達は唸った。
「すいません、注文です!
2個はお店で食べて、10個持ち帰るそうです」
大量注文を受けて舞はそつなく手を動かしている。
職人1「おっと、仕事しねえとな」
せっせと働く姿に、無駄口を叩いていた職人達は仕事に戻っていった。