第28章 狐の化かし合い(光秀さん)(R-18)
「大福2つ出すと、残りはひい、ふう……あと4つでお終いでーす」
暖簾をめくって奥の厨にかける声は、以前とは比べようもなく生き生きとしていた。
その声を聞くと朝から手を動かしっぱなしの職人達も疲れてはいられないと仕事に精を出した。
職人「追加分、こっちにあるから運ぶよ」
職人が抱えた菓子箱の中には出来立てふかふかの大福がたくさん詰まっている。
「わ!美味しそう!頑張って売りますね!」
舞はお盆を手に店の外に出た。
「お待ちどう様です。ごゆっくりどうぞ」
客「あぁ、ありがとう」
舞は注文品を客に出し、空いた食器類を次々に片付けて新たな客を迎え入れている。
艶やかな黒髪を後ろで結い上げ、きめ細かい肌は薄いおしろいで整えられている。今日は深みのある紅を塗っていて、口が動く度に色っぽい。
男1「あの子、噂通りの器量良しだな」
男2「ばか、噂以上だよ」
舞は今や安土城下で有名な看板娘になっていた。
噂を確かめようと訪れる男性客を一瞬にして虜にしてしまうくらいに女っぷりを上げ、男性客はチラチラと覗き見ては、だらしなく顔を緩ませている。
職人1「舞は働きもんだなぁ」
職人2「それに美人だ。聞いたか?舞に惚れれば地獄なんだとよ」
職人1「あ?そりゃ初耳だな」
二人の職人は店の外で客引きをしている舞を見ている。