第28章 狐の化かし合い(光秀さん)(R-18)
首に跡がつかないように甘噛みすると、舞はハッと息を漏らして大人しくなった。
光秀「九兵衛にどこまで許した?」
「許したって……別に許していません。
最初、九兵衛様が光秀様の家臣と知らず抵抗したんですが、もっと嫌がってくださいとか、私の泣き叫ぶ声にゾクゾクするとか言われました」
光秀「他には」
部下の性癖など知らないが演技の中に本音が混じっていないとは限らない。
舞は何度目かの『九兵衛様を怒らないでくださいね』という前置きを口にした。
「店主に覗かれそうだったので一緒のお布団に入って、今と同じような体勢になって……、え、っと、私の声を聞かせるために耳を舐められました。
あとはちょっとだけ身体をまさぐられただけです」
(九兵衛のやつ、どこをまさぐった?)
見たところでわかるはずもないが、半裸状態のなまめかしい体に視線を走らせた。
光秀「それだけやられれば充分だ。お前は平気だったか?」
「あの状況を乗り越えるのに必死でしたし、九兵衛様もお仕事でしたことでしょう?
それにとても優しく接してくださったので…」
はにかむ表情はいつになく色気があり、打ち合わせの際の快活な顔とはかけ離れている。
九兵衛が舐めたという耳に吐息を送り込んでやると、舞の口からから喘ぎとも吐息とも言えないものが漏れた。
光秀「九兵衛が気に入ったのか?」
「え?ふ、あ、ん!息を吹きこまない、で。はぁ、んっ」
一心に俺を想っているのかと思えば他所の男に気があるような素振りを見せる。
この娘、店の客達に人気があったようだが天性の男たらしか…。
「や、やめてください。九兵衛様はとても親切にしてくださったので感謝しておりますが、私は光秀様が好きです。
ひゃっ…!今夜限りで片恋は終わらせ……ん!…ますけどね」
俺の吐息を避けようとイヤイヤと首をふりながら、いじらしく告白してくる。
忘れる、終わらせると言っても簡単にいくわけがない。
熱くなった恋を無理やり忘れる難しさを、この娘は知らないから口にする。