• テキストサイズ

☆姫の想い、彼の心☆ <イケメン戦国>

第28章 狐の化かし合い(光秀さん)(R-18)


「光秀様っ」


吐き出すように呼ばれた名に、撫でる手が止まった。


(今、俺の名を口にしたのか?)


舞のどこにも、そんな素振りは無かった。

打ち解けたように話をしていたが眼差しはしっかりしていたし、思わせぶりな言動や含みもなかったはず。

何よりも三成のような純粋な男を好いていた女が、悪い噂しかない俺に想いを寄せるはずがない。


(抱いて欲しいための方便か?それとも言い間違えただけか?)


顔を見て確かめようにも舞は俺の胸に張り付いているので、つむじと額くらいしか見えなかった。


「三成様は初恋の方ですが、お似合いの姫様がいらっしゃいますし、裏の仕事に片足つっこんでいる人間が想いを寄せること自体、分相応だと……」


(三成を目で追っていたのは少々の未練で、片恋は終わらせていたということか)


光秀「真相を知らずに案内係をしていただけだ。そこまで悪どいことをしていたわけじゃないだろう。
 三成を呼んでいたわけは?」

「ずっと……心の中では光秀様を呼んでいました」


舞の身体の熱が触れている部分から移ってくる。


光秀「俺だと気づいていたのか。
 薬に押し負けて三成を呼んでいるのかと思っていたぞ」

「私が勘違いしていると思えば、光秀様が触れてくれるだろうと思ったからです。
 あなたは自分に恋焦がれている女性に手を出さない人です、きっと。
 最初から光秀様を呼んでしまったら、相手に…っしてくれな……から、だから、あなたを三成様だと勘違いしているフリをしたんです…っ」


顔を押し付けられている箇所の着物が、ジワリと濡れた。


(終始泣いていたのは恋しい男ではなく、他の男の名を呼ぶしかない悲しさゆえか)


茶屋の娘に欺かれるとはぬかった。だが舞は最初から敏く、言葉に物を含ませられるような女だった。

年齢にそぐわない肝の座りようで計画に加担したばかりか、重ね着をして、応急で作った紐まで忍ばせていたというから、勘の鋭さと頭の回転の良さは間諜なみだ。

そして今もだ。

薬に冒されてもなお頭を働かせて、恋しい男に抱いてもらえるよう謀った。


光秀「俺を騙すとは恐ろしい娘が居たものだ」


化かし合いに負けたのはいつぶりだろうか。本心からそう言ってやると舞は泣き笑いをこぼした。


/ 1014ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp