第28章 狐の化かし合い(光秀さん)(R-18)
三成には姫が居る。それは薬に冒されていようと舞も覚えているはずだ。
最後までしないのは姫に操をたてているからだと理解しても良さそうなものだ。
(それがどうでもよくなるくらい薬に負けてしまったのか?)
ありえなくはないが、知る限り舞はどこまでも理性的な女だった。
協力を仰いだ際、一番に和菓子職人の行く末を心配していた人間が、自分の欲求を押し通して三成と姫の幸せをご破算にしようとするだろうか。
小さな疑問は何故か薬のせいと片付けることができない。
(俺は何か見落としているのか)
舞は俺の背に腕を回して泣いている。
好いている男に縋り付くように……
「みつ、なり様、どうか、どうか情けをください。
後悔なんて絶対しないから」
光秀「あなたは今、正常な判断ができない状態です。そんな方を抱くことはできません。
それ以外に私が抱けない理由も、あなたはわかっているでしょう?」
「っ……」
苦悩の沈黙は、突如涙まじりの声で崩れた。
胸を引き裂かれそうになっている女の声は、悲痛で、胸に刺さる。
(だが、どう訴えてこようと抱くつもりはない)
叶えてやれない詫びに頭を撫でてやる。
「あなたをお慕いしております。
あなたが私のこと、なんとも思っていないのはわかっています。
でも今日だけ…一度だけでいいから抱いてください!みつ……」
『三成様』
そう続くと疑わなかった。