第28章 狐の化かし合い(光秀さん)(R-18)
苦しみを和らげるには身体を慰めるしかない。
光秀「九兵衛、城に仕事を残してきた。お前が処理できる仕事はやっておけ」
九兵衛「承知いたしました」
珍しく案ずる視線を向けられた。
九兵衛が俺を案じるのは命の危険が迫った時だけ。ならば今案じているのは舞だ。
(俺が手をつけると思っているのか?)
先程のやり取りをみれば、初対面だった二人は随分打ち解けていた。
光秀「指で慰めるが何か文句でもあるのか」
九兵衛「いいえ。どうか舞さんを楽にしてあげてください」
光秀「お前がやるか?」
九兵衛「……彼女が望まないでしょう」
九兵衛は足早く去っていき、部屋には舞の切ない呼吸だけが響いた。
「ぁ……あ、みつ、なり様……」
瞑った目から涙をこぼし時折好いた男の名を呼んでいる。
(やはりそうだったか…)
舞を協力者に引きこむ前に、どんな人物なのか見に行ったことがあった。
三成と姫と楽しそうに会話をする一方、片恋をしている女の顔が垣間見えていた。
「はぁ、ぁ、助けて、三成様、ぁ」
昼夜関係なく使役されるだけの生活を送っていた人間が、三成の素朴な優しさと物腰の良さに惹かれたのは自然なことだ。
「う、ぅ、一夜かぎりの、情けを…」
男の経験もない女が、ボロボロと涙をこぼして懇願する姿は憐れだった。
光秀「しっかりしろ」
「みつ、な、り様……」
いつも勝気な黒目は、理性を焼かれて焦点が合っていなかった。
「三成様、お願いです。私を抱いてください」
俺の手を握る手は異常に熱く、汗でじっとりと濡れている。
(俺を三成と見間違えるほどに理性を失ったか)
あの薬に幻覚作用はなかったはずだが、なにぶん、舞が飲んだ水にどれくらいの薬が混入していたか定かではない。
過剰摂取の副作用で幻覚作用が出てもおかしくないだろう。