第28章 狐の化かし合い(光秀さん)(R-18)
「ん……」
寝入ってからそう時間がたたないうちに寝苦しさで目が覚めた。
(布団や寝間着の質が良すぎて合わなかったかな…)
寝返りを打っているうちに汗が出てきて、掛布団を一枚どけた。
(暑い)
もう秋だというのに、なぜこうも熱いのだろう。
水差しから水を貰って飲んでみても、体の熱は下がらず汗は止まらなかった。
「な、にこれ……」
不自然な動悸がおこり、無駄に血液の巡りを早めているようだ。
(今夜の出来事で情緒不安定とか…?)
精神的なことが理由ならば、布団で大人しくしているしかないと、もう一度横になり心落ち着けようと努力した。
(落ち着け、大丈夫。やっとあの店主から解放されたんだから喜ばしいことじゃない)
しかし何度言い聞かせても症状は良くならない。
ドクドクト心臓が脈打ち、内側から打ち破ってきそうだ。
「はぁっ……」
高熱を出した時のように頭が朦朧として視界が涙で滲んだ。
(こんな立派な所に連れてきてもらって、熱なんか出していられないよ)
お世話になっている身で迷惑はかけられない。
ギュッと目を瞑って睡魔を待っているうちに、身体の熱は奇妙な感覚を呼び込んできた。
(なんだろう、お腹が熱い…)
「……はぁ、はぁっ」
身体全体で息をして熱に耐えた。
(指がじんじんする…)
末端まで血液が届いているにも関わらず、心臓は爆発しそうな勢いで血液を送り続けている。
そのせいか手足の指が痺れ、震えている。
「はぁ……だ、れか…」
これは普通じゃないと助けを呼ぼうとした時には、とぎれとぎれの声しか出せなくなっていた。
布団の上で丸まって耐えていると、何かが甘く誘いかけてくる。
探せ、連れてこい
この飢えを満たす男を早く
あられもない衝動に抗って、布団の上でうずくまった。