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☆姫の想い、彼の心☆ <イケメン戦国>

第28章 狐の化かし合い(光秀さん)(R-18)


――――

店に踏み込んできた光秀様達は、店主と用心棒、薬を作っていた職人達を一斉捕縛した。

今夜お客が少なかったのは、店の近くで待ち伏せしていた光秀様達が捕えていたせいだった。

店主が怪しまないよう、そこそこは見逃したそうだが、やはり薬を買った後に店の外で掴まえていたらしい。

九兵衛様は襖の向こうに居た店主をあっさりと掴まえることに成功し、紐で縛り上げた。


「その紐は…」


何かあった時は相手の首を絞めてでも逃げようと編んだ紐が、店主の身体に巻きついている。

袂を確かめるといつの間にか無くなっていた。


(いつの間に取られてたの?)


スカスカの袂を無意味に探っている私に、九兵衛様はにこりと笑いかけてきた。

爽やかな笑みと、憤怒の形相の店主が対象的すぎる。


九兵衛「捕縛用の紐を忘れて困っていたんですよ。丁度良かったので失敬しました。
 ご自分が作った紐で、この悪党を縛り上げられて本望でしょう?」

店主「んんーーーー!!」


店主は口を塞がれているにも関わらず、私に何か言おうと真っ赤な顔で唸っている。

暗がりで女物のだて締めは浮き上がって見えて、薬の売人の最後にしては滑稽な姿だった。


九兵衛「この畜生を牢に連行しろ」


九兵衛様は店主の視線から私を庇うように立つと、別人のように冷たい声で命じた。


(お、終わった………?)


呆気なくて終わった気がしない。

朝が来れば餡を炊く匂いと餅をつく音がして、不機嫌な店主に開店準備をしろと急きたてられそうだ。

夕方には夜の職人が来て、私は案内係になる。

安定といえばおかしい話だが、繰り返していた毎日が突如終わり、胸の中にぽっかりと穴が空いた。


九兵衛「舞さん、下が落ち着いたようですので行きましょう」

「ええ」


布団から抜け出ると着物が乱れていて、あんなにきつく巻いた湯文字がズルリとぶら下がっていた。

中途半端な湯文字を引っ張って取り去り、襦袢や着物の裾だけ簡単に整えた。

上等な着物だけあって、軽く引っ張ると皺は伸びて元通りだ。


「お待たせしました」

九兵衛「歩けますか?覚束ないようでしたらまた抱き上げて差し上げますよ」


仄かな微笑みに甘さとからかいが混じっていて、ああ、やっぱりこの人は光秀様の部下なんだなと思った。

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